「宇宙」と書いて,「そら」と読ませることが多い。そらは,手が届かない場所のことを云う。
quote:米国航空宇宙局(NASA)の土星探査機,カッシーニが,土星の衛星タイタンの写真を送信してきた。が,明るい部分と暗い部分が点在する以前の画像と変わらず,いまだその原因はわかっていない。だが,タイタンの南極付近に雲の存在が確認された。これはタイタンにスーパー・ローテーションが起きている有力な証拠となる。
この記事を読んだ人は思うだろう。これは空想の物語のお話か,それとも夜空に輝くシリウスより向こうにある,ただ点でしかみえないほど遠くの星の話のことか,と。タイタンのことは,それほどなにもわかっていない。望遠鏡では優雅な輪を持つのがみえ,探査機を送り込むほどの距離にある土星の衛星なのに,このていたらくはいったいなんなんだ。人間の科学力とはこんなものか,と。そして,こんなものなのだ。
「実際のところ,人が知っていることは,地球のことだけなんです。人が月に行ったことなど,誰ももう信じてはいない。もう何十年も昔の話で,それからもう一度行くこともかなっていないし,なにか発見があったわけでもない。そんなことが,あり得るわけがないでしょうが。もう一度云いましょう。人は地球以外のことは,なにも知らない。宇宙とは,いまだSFの世界でしかないのです。ただ,知ろうという気持ちしかない。それが現状です。ですが,それでよいのです。その気持ちがあしたを作る唯一のもの。いつかタイタンの地表のカフェでアイスカフェモカを注文する日が,それだけで作られるのですから」。
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